障害者雇用の採用計画の立て方|法定雇用率2.7%の確認・職務の切り出し・合理的配慮の準備表
本記事の成果物は「障害者雇用の採用計画表」と「職務切り出しシート」です。
1.法定雇用率と自社の義務を確認する
厚生労働省によると、民間企業の法定雇用率は2.7%で、従業員を37.5人以上雇用している事業主は障害者を1人以上雇用しなければなりません。これらの事業主は毎年6月1日現在の障害者の雇用状況をハローワークに報告する義務があり、法定雇用率を達成していない常用労働者100人超の企業からは障害者雇用納付金が徴収されます。厚生労働省「事業主の方へ」(障害者雇用)。この率と対象範囲は2026年7月から適用されています。大分労働局「令和8年7月より障害者の法定雇用率が2.7%に引き上げられます」。
同ページは、短時間労働者は原則として0.5人とカウントすること、事業主に障害特性に配慮した措置(合理的配慮)の提供義務があり、募集・採用時の配慮は応募者からの申出により行うこと、事業主に「過重な負担」を及ぼす場合はこの限りでないことも示しています。出典:厚生労働省。必要人数の正確な計算は、厚生労働省・労働局が提供する計算表や雇用状況報告の記入要領で確認します。
2.採用計画表を作る
算定の基礎となる常用労働者数(短時間労働者を含む)/現在雇用している障害者数のカウント/法定雇用率に対する不足数と達成の期限/採用予定人数と時期/受入れ部署と職務の候補/募集の経路(ハローワーク、就労移行支援事業所、特別支援学校、人材紹介等)/選考方法と配慮の申出の受付方法/入社後の支援者(上司・相談担当)/定着の確認時期/予算と活用できる支援制度の確認。
人数だけを目標にすると、受入れ部署の準備が追いつかず定着しないおそれがあります。採用時期は、受入れ部署の業務の繁閑と支援者の確保に合わせて決めます。
3.職務を切り出す
既存の業務を棚卸しし、手順が定まっている業務、まとまった量がある業務、他の社員の負荷を下げる業務などから候補を選びます。職務の棚卸しは職務分析の確認表を使います。
業務名/現在の担当部署・担当者/頻度と量(1日・1週あたり)/手順の明確さ(手順書の有無)/必要な知識・技能/判断の要否と相談先/作業環境(場所、設備、騒音、人の出入り)/成果の確認方法/この業務を移すことで他の社員が得られる時間。
| 業務の例(編集部の例示) | 切り出しの観点 | 確認すること |
|---|---|---|
| データ入力・照合 | 手順が明確で量がある | 入力ルールの文書化、確認者 |
| 書類の電子化・ファイリング | 期限に余裕があり、成果が見える | 個人情報を扱う場合の取扱いルール |
| 備品管理・社内配送 | 複数部署の負荷を下げる | 依頼の受付方法、優先順位 |
| 製造の検品・梱包 | 工程が定型化している | 作業環境、安全上の配慮 |
上記は例示であり、障害の種類や個人の特性・希望によって適した業務は異なります。特定の障害にこの業務が向く、と決めつけないことが前提です。
4.募集・選考での配慮を準備する
- 求人票に職務内容、勤務時間、勤務場所、作業環境を具体的に書く。労働条件の明示は労働条件明示の点検表を使う。
- 応募書類や面接の案内に、配慮の申出先と申出方法を記載する。
- 選考で確認するのは職務に必要な事項に限り、確認の仕方を事前に決める。採用要件は採用要件の合意シートでまとめる。
- 職場実習など、本人と職場が互いに確かめる機会を検討する。利用できる制度はハローワーク等に確認する。
5.架空例:従業員60名の会社が初めて採用する
以下は顧客実績ではない架空例です。
| 項目 | 架空の記入例 |
|---|---|
| 義務の確認 | 常用労働者60名のため雇用義務の対象。現在の雇用は0名 |
| 職務 | 総務部の書類の電子化(1日約4時間分)と社内の備品管理 |
| 受入れ体制 | 総務課長を上司、総務担当1名を日々の相談担当に指名 |
| 募集 | ハローワークと地域の就労支援機関に相談し、職場実習を経て選考 |
| 入社後 | 初月は毎週、以降は月1回の面談。配慮の内容は本人と話し合って記録し、見直し時期を決める |
6.研究から言えること、言えないこと
Schur・Nishii・Adya・Kruse・Bruyère(2014)は、米国の8社の集中的な事例研究(5,000人超の従業員・管理職調査と、障害のある従業員・管理職128人への面接・フォーカスグループ)で、障害のある人のほうが配慮を求める割合は高いものの、求められる配慮の種類や報告される費用・便益は障害の有無で似ていたこと、高い費用や同僚の否定的反応への懸念は実際には見られなかったこと、配慮の付与は同僚が支援的な場合に本人の態度に良い影響を持ったことを報告しています。原著論文(Human Resource Management)。
この研究は米国の企業を対象としたもので、日本の法定雇用率制度や個別の職場での結果を保証するものではありません。本記事では、配慮を特別な費用としてだけ捉えず、職場の支援体制と一緒に準備する理由として参照しています。計画表・シートはCareerSync編集部の設計例です。
よくある質問
法定雇用率を満たせないとどうなりますか?
常用労働者100人超の企業で未達成の場合は障害者雇用納付金が徴収されます。法定雇用率の達成に向けた計画を作り、取組を記録しておくと、社内での説明や関係機関への相談に役立ちます。
入社後の定着のために何を準備すればよいですか?
相談担当、面談の頻度、配慮の内容と見直し時期を決めます。入社直後の受入れは中途入社者の受け入れチェックリストも参考にしてください。
まず、自社の常用労働者数と現在の障害者の雇用数を確認し、受入れの候補となる業務を3つ書き出してください。採用戦略・採用ブランド支援では、職務の切り出し、募集・選考、入社後の受入れまでを一続きで設計します。
出典確認:2026年11月8日。雇用率の算定や納付金、助成制度の個別の取扱いは、ハローワーク、都道府県労働局、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構等へご確認ください。計画表、シート、業務の例示、架空例はCareerSync編集部の設計例であり、公的な様式や特定企業の実績ではありません。
この記事はCareerSyncの支援方針・実務上の考え方を整理したものです。個別の顧客事例や成果の報告ではありません。
