男女間賃金差異・女性管理職比率の公表準備|101人以上企業の算出範囲と説明欄の点検表
準備では、数値を出す前に「対象期間」「賃金に含める範囲」「人員数の数え方」「正規・非正規の範囲」「管理職の定義」を決めて記録し、差異が生じている要因を等級・職種・勤続などに分けて説明欄へ整理します。本記事の成果物は「算出前提の決定表」「差異の要因分析表」「公表前チェック表」です。
1.自社が対象か、いつ公表するかを確認する
厚生労働省の解説資料によると、常用労働者301人以上の企業は、男女間賃金差異、女性管理職比率に加え、「職業生活に関する機会の提供」と「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」の区分からそれぞれ1項目以上を公表します。101人以上300人以下の企業は、男女間賃金差異、女性管理職比率に加え、両区分の全項目から1項目以上を公表します。100人以下の企業は努力義務です。厚生労働省「女性活躍推進法に基づく男女間賃金差異の情報公表について」/女性活躍推進法特集ページ。
初回の公表は、2026年4月1日以後に最初に終了する事業年度の実績を、その事業年度が終了し新たな事業年度が始まってからおおむね3か月以内に行うとされています。例えば2027年3月末に事業年度が終わる企業は、おおむね2027年6月末までが目安です。厚生労働省「男女の賃金の額の差異の算出及び公表の方法について」。
2.男女間賃金差異の算出手順をそろえる
- 労働者を男女別・正規/非正規別の4種類に分ける。
- それぞれの一事業年度の総賃金と人員数を算出する。
- 総賃金を人員数で割り、平均年間賃金を出す。
- 正規と非正規を合算して全労働者の平均年間賃金を出す。
- 「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」の区分ごとに、女性の平均年間賃金÷男性の平均年間賃金×100で割合を出し、小数点第2位を四捨五入して第1位まで表示する。
本社と支社があれば全拠点を積み上げ、派遣労働者は派遣元で算出します。該当者がいない区分は「-」と記載します。出典:厚生労働省 解説資料。
3.算出前提の決定表を作る
| 決めること | 厚生労働省資料の考え方 | 自社で記録すること |
|---|---|---|
| 賃金の範囲 | 名称を問わず労働の対償として支払うもの。退職手当、通勤手当等は事業主の判断で除外してよい | 除外した手当の具体的な名称 |
| 人員数の数え方 | 事業年度の12か月の特定日の人数の平均などが考えられる。パート労働者は正規雇用労働者の所定労働時間を参考に換算してもよい | 採用した方法、換算した場合はその旨(説明欄に記載) |
| 正規・非正規 | 正規は期間の定めなくフルタイムで働く労働者、非正規はパートタイム・有期雇用労働者 | 自社の呼称(嘱託、契約社員等)がどちらに入るか、出向者の扱い |
| 管理職の定義 | 「課長級」と課長級より上位の役職(役員を除く)の合計。一般に課長代理・課長補佐は課長級に該当しない | 自社の役職名と課長級の対応表 |
| 方法の一貫性 | 初回以降は一貫した方法を採用し、変更時は変更した旨と理由を説明する | 決定日、決定者、前回からの変更点 |
出典:男女間賃金差異の解説資料/管理的地位にある労働者に占める女性労働者の割合の算出及び公表の方法について。育児短時間勤務の利用者などを算出から除外することは適切ではないとされており、働き方の違いは説明欄で補足します。
4.架空例:差異の要因を分けて説明欄の材料にする
以下は顧客実績ではない架空例で、数値は説明のための仮定です。
| 確認する切り口 | 架空の状況 | 説明欄・次の行動への反映 |
|---|---|---|
| 等級別の人数構成 | 上位2等級の女性比率が低い | 等級別の構成を補足し、昇格候補の育成計画を確認 |
| 管理職比率 | 課長級以上12名中、女性2名 | 管理職登用の判断基準と候補者の母集団を点検 |
| 職種 | 賃金水準の高い技術職に男性が多い | 職種別の差異を任意で追加公表するか検討 |
| 勤務時間 | 短時間勤務の利用者が女性に多い | 除外せず、説明欄で働き方の違いを補足 |
| 勤続年数 | 女性の平均勤続が短い | 継続就業の課題を行動計画で扱うか検討 |
昇格判断の点検は管理職昇格の判定シート、採用時給与による逆転は報酬圧縮の点検表で確認します。
5.研究から言えること、言えないこと
Blau・Kahn(2017)は、米国のパネル調査(PSID)の1980〜2010年のデータで男女賃金差の縮小を確認し、2010年時点では従来の人的資本変数の説明力は小さく、職業・産業の違いが引き続き重要であったこと、賃金分布の上位で差の縮小が遅かったことを報告し、関連研究をレビューしています。原著論文(Journal of Economic Literature)。
Baker・Halberstam・Kroft・Mas・Messacar(2023)は、カナダの公的部門で一定額を超える個人の給与を公開する法律を分析し、大学教員の男女賃金差が約20〜40%縮小したと推定しています。原著論文(American Economic Journal: Applied Economics)。
どちらも日本の女性活躍推進法に基づく公表を対象とした研究ではありません。後者は個人別の給与公開であり、企業単位の割合を公表する日本の制度とは仕組みが異なるため、同じ効果を期待する根拠にはなりません。本記事では、差異を一つの数値で終わらせず、職種や上位層の構成に分けて確認する理由として参照しています。
6.公表前チェック表
公表日と対象期間(必須)/3区分の数値(該当者なしは「-」)/小数点第1位表示/除外した手当の名称/正規・非正規に含めた呼称、出向者・派遣の扱い/人員数の数え方と換算の有無/女性管理職比率と管理職の定義/追加の公表項目(301人以上は2項目、101〜300人は1項目以上)/説明欄の要因分析と取組/前回から方法を変えた場合の変更点と理由/公表先。
厚生労働省は、有価証券報告書のみでの公表では女性活躍推進法の義務を果たしたことにはならないとし、公表方法として「女性の活躍推進企業データベース」への掲載が最も適切としています。女性活躍推進法特集ページ。
よくある質問
差異が大きい場合、公表を遅らせてもよいですか?
対象企業には公表が求められます。差異の大きさよりも、算出前提と要因、今後の取組を説明欄で示すことを準備の中心にします。
経営会議では何を報告すればよいですか?
3区分の数値に加え、要因の切り口、管理職候補の状況、行動計画との関係を一枚にします。継続的に見る指標は人事KPIダッシュボードへ組み込みます。
まず、自社の役職名を課長級以上・それ以外に分ける対応表と、除外する手当の一覧を作ってください。経営人事パートナー支援では、公表数値の算出前提、要因分析、行動計画と経営会議での報告を一続きで整えます。
出典確認:2026年11月4日。制度の個別適用は都道府県労働局(雇用環境・均等部(室))、社会保険労務士等へご確認ください。決定表、要因分析表、チェック表、架空例はCareerSync編集部の設計例であり、公的な様式や特定企業の実績ではありません。
この記事はCareerSyncの支援方針・実務上の考え方を整理したものです。個別の顧客事例や成果の報告ではありません。
