人件費の予算と実績がずれる理由。人数・単価・時期で確かめる方法
予算を下回っても安心はできません。必要な採用が遅れたせいなら、事業上の課題は残ったままです。毎月の定例会議でやることは2つです。差額の理由を説明すること。そして、これから必要な対応を一緒にまとめることです。
1. 比較する費用と人数の範囲をそろえる
最初に、予算と実績が同じ費用を集めているかを確かめます。予算は基本給だけ、実績は賞与や会社負担の社会保険料等まで含む。これでは比べても、採用や昇給の影響は読めません。表の上部に、対象の法人・部門、対象月、費用項目を書きます。
人数も、月末時点の在籍人数だけでは足りません。入社月と退職月、異動の前と後の部署、給与が出る期間を確かめられるようにします。給与データと会計上の費用がずれることもあります。その場合は、自社の集計・処理方法に沿って理由を整理します。人数の増減とは混ぜないことが大切です。
賞与、時間外手当、会社負担分、採用費などは、まず項目ごとに差を確かめます。何を人件費に含めるかは、管理の目的と社内の計算方法をそろえて決めます。
2. 人数と時期を、重ならないように分ける
採用予定を取りやめた場合と、予定は残したまま入社が遅れた場合。この2つを同じ「欠員」にまとめると、次の手が決まりません。前者は採用人数の変更、後者は時期の変更として記録します。
次の表は、管理用の分け方の例です。どこでも通用する計算順序ではありません。ただ、毎月同じ順で置き換えると比べやすくなります。人数と単価が同時に変わると、どちらから計算するかで要因ごとの金額が変わります。順序は社内で決めておきます。
| 順序 | 置き換えるもの | この段階で固定するもの |
|---|---|---|
| 人数 | 採用・退職等による対象人数の変更 | 予算の単価と予定時期 |
| 時期 | 残る対象者の入退社・異動時期 | 人数変更後の対象者と予算単価 |
| 単価 | 対象者の給与単価 | 変更後の人数と対象期間 |
取りやめた採用枠を人数の差に数えたら、その枠を入社の遅れとして再び数えません。一人ひとり、または採用枠ごとに番号を付けます。変更前後の予定と理由を残せば、集計での重複を防げます。
3. 単純な例で、差の合計を確かめる
4〜6月の3か月で考えます。既存社員10名に加え、4月に2名を採用する予算です。全員の基本給は月30万円とします。予算は12名×30万円×3か月=1,080万円です。以下は説明用の架空の数字で、顧客事例ではありません。
実際には、追加採用のうち1名を取りやめました。もう1名は5月初日に入社したとします。既存10名の基本給は4月から月31万円、新入社員は月30万円です。全員が在籍月を通じて勤務したとします。月の途中の入退社や欠勤による変動はありません。
| 差の要因 | 計算 | 実績−予算への影響 |
|---|---|---|
| 人数:採用1名取りやめ | −1名×30万円×3か月 | −90万円 |
| 時期:採用1名が1か月遅れ | 1名×30万円×(2−3か月) | −30万円 |
| 単価:既存10名の基本給増 | 10名×(31−30万円)×3か月 | +30万円 |
| 差の合計 | −90−30+30 | −90万円 |
実績を直接計算しても、10名×31万円×3か月+1名×30万円×2か月=990万円です。990−1,080=−90万円となり、分けて出した合計と一致します。この例は基本給だけです。賞与、時間外手当、会社負担の社会保険料、採用・教育費等は含めていません。
4. 差額の説明を、翌月以降の判断につなげる
例の90万円減を、そのまま「余った予算」とは扱いません。確かめることは3つです。取りやめた仕事を誰が担うのか。入社の遅れで業務や売上に影響が出ていないか。教育の開始が後ろにずれていないか。外注や応援で補っていれば、その費用も別に並べます。
毎月の定例会議では、予算、実績、差の理由、今後の見込み、決めたいことを一枚にまとめます。採用時期の変更は、残りの月に反映します。単価の変更は、翌期にも続くかを確かめます。最初に承認した予算は残します。実績を踏まえた見込みは、別の列で更新します。こうすると、当初計画との違いを追えます。
更新と判断の担当も決めます。人事は人員と入退社の予定、経理・経営企画は費用との対応、事業責任者は業務への影響を確かめる、などです。説明のつかない差額は、無理に人数の差へ入れません。確認中の項目として、担当と期限を付けます。
5. 毎月の定例会議の前に確認すること
- 予算と実績で、対象月・部門・費用項目がそろっているか。
- 採用人数の変更と、入社時期の遅れを分けたか。
- 計算の順序をそろえ、同じ変更を二重に数えていないか。
- 要因ごとの差の合計が、実績と予算の差額と一致するか。
- 減った費用の裏に、手つかずの仕事や別の費用がないか。
- 来月以降の見込み、決める人、更新の期限が決まっているか。
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Hansen・Otley・Van der Stede(2003)「Practice Developments in Budgeting: An Overview and Research Perspective」は、予算管理の研究レビューです。予算の計画機能と業績評価上の問題を扱い、予算管理を見直す議論を整理しています。
差を業績の良し悪しとすぐに決めつけず、当初計画の前提と実行状況に立ち返るための背景です。人数・単価・時期の差の表は、二重に数えるのを避けるための計算上の整理です。
人件費に特化した実証研究ではなく、以下の計算式や配分率を裏付けるものではありません。本記事の手順・表・記入例は、研究結果そのものとは区別したCareerSync編集部の実務設計です。
この記事はCareerSyncの支援方針・実務上の考え方を整理したものです。個別の顧客事例や成果の報告ではありません。
