人事データの取扱いルールの作り方|利用目的・閲覧権限・健康情報を分ける管理表
特に健康診断結果やストレスチェック結果などの健康情報は、評価・給与のデータと同じ扱いにせず、取り扱う人と加工の方法を分けます。本記事の成果物は「人事データ区分の管理表」と「閲覧権限の点検表」です。
1.法令・ガイドラインの考え方を確認する
個人情報保護委員会の「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」(2026年6月一部改正)では、利用目的をできる限り具体的に特定し、「事業活動に用いるため」のような抽象的な記載では具体的な特定にならないこと、要配慮個人情報の取得には原則として本人の同意が必要なこと、漏えい等を防ぐための安全管理措置をリスクに応じて講じること、個人データを取り扱わせる従業者(取締役や派遣社員を含む)に対し必要かつ適切な監督を行うことなどが示されています。個人情報保護委員会「ガイドライン(通則編)」。
健康情報については、「雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」が、診断名、検査値、具体的な愁訴の内容等の加工前の情報や詳細な医学的情報は産業保健業務従事者に取り扱わせることが望ましいこと、それ以外の者に提供させる際は産業保健業務従事者に適切に加工させる等の措置を講ずること、本人の同意がない場合にストレスチェック結果を人事に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者に取り扱わせてはならないこと、取扱いを事業場内の規程等として定めて周知することが望ましいことを示しています。個人情報保護委員会「健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」。
2.人事データを区分する
| 区分(編集部の例示) | 主なデータ | 取扱いで注意すること |
|---|---|---|
| 基本情報 | 氏名、所属、役職、入社日、連絡先 | 社内で広く使うが、私的な連絡先は閲覧範囲を限定 |
| 処遇情報 | 等級、給与、賞与、評価結果 | 本人・上司・人事の範囲で、上司は自部門に限定 |
| 面談・相談記録 | 1on1記録、異動希望、相談窓口の記録 | 記録の目的と閲覧者を事前に決める |
| 健康情報 | 健康診断結果、ストレスチェック結果、休職の診断書 | 産業保健業務従事者による取扱い、加工した情報のみを提供 |
| 採用情報 | 応募書類、面接評価、選考結果 | 不採用者の情報の保管期間 |
3.人事データ区分の管理表を作る
データ区分/含まれる項目/利用目的(具体的に)/本人への通知・公表の方法/取得・更新する担当/閲覧できる人(役職・部門の範囲)/保管場所(システム名・紙の保管場所)/保管期間と廃棄方法/社外への提供・委託の有無と相手先(給与計算委託、社会保険労務士など)/要配慮個人情報を含むか/最終見直し日。
利用目的は「人事管理のため」ではなく、「給与の計算と支払い」「評価に基づく昇給・賞与の決定」「健康診断の結果に基づく就業上の措置」のように、使い道が分かる書き方にします。
4.閲覧権限を点検する
システム・フォルダ名/アクセスできる人の一覧(退職者・異動者が残っていないか)/管理職が自部門以外のデータを見られないか/健康情報が人事評価と同じ場所にないか/ダウンロード・印刷の可否と記録/外部委託先のアクセス範囲/点検者・点検日・是正事項。
人事KPIを経営会議で使う場合は、個人が特定されない粒度で集計します。人事KPIダッシュボードの作成時に、どの区分のデータを使うかを管理表と照合します。人事業務の見直しと合わせる場合は人事BPRの業務フロー見直しを参照してください。
5.架空例:管理職が健康情報を見られる状態を直す
以下は顧客実績ではない架空例です。
| 点検で見つかったこと(架空) | 是正の内容 |
|---|---|
| 共有フォルダに部署ごとの健康診断結果一覧があり、各部門長が閲覧できた | 一覧を産業保健の担当のみのフォルダへ移し、部門長には就業上の措置が必要な人の措置内容だけを伝える運用に変更 |
| 1on1の記録を人事評価のシステムに保存していた | 記録の目的を「育成と業務調整」と定め、評価とは別の場所に保存。閲覧は本人・上司・人事担当に限定 |
| 退職した人事担当者のアカウントが残っていた | 退職・異動時の権限削除を人事の手続一覧に追加 |
部下の不調に気づいたときの記録の扱いは管理職の初動の記事も参照してください。
6.研究から言えること、言えないこと
Bhave・Teo・Dalal(2020)は、職場のプライバシーに関する研究をレビューし、従業員は組織に提供する個人情報やアクセスを自分で管理できることを期待する一方、雇用主は従業員に関する広範な情報を求めるという、相反しがちな期待があることを整理しています。情報プライバシーと職場環境のプライバシーを区別し、利害関係者ごとの利害を考える枠組みを示し、規制と技術の動向がこの隔たりを大きくしていると論じています。原著論文(Journal of Management)。
このレビューは日本の個人情報保護法への対応方法を示すものではなく、特定の管理方法の効果を検証したものでもありません。本記事では、人事データの取扱いを法令対応だけでなく、従業員の期待と会社の必要の調整として設計する理由として参照しています。管理表・点検表はCareerSync編集部の設計例です。
よくある質問
上司が部下の給与を見られるのは問題ですか?
一律に問題とは言えませんが、利用目的(昇給の検討など)と閲覧範囲(自部門の部下のみ等)を決め、必要以上に広く見られる状態にしないことが重要です。
小規模な会社でも管理表が必要ですか?
規模にかかわらず、どのデータを誰が見られるかを一覧にしておくと、担当者の交代や外部委託の際に役立ちます。最初は区分と閲覧者の2列だけでも始められます。
まず、人事データを保管しているシステムとフォルダを一覧にし、それぞれ「閲覧できる人」を書き出してください。経営人事パートナー支援では、人事データの区分と取扱いルール、人事業務の見直し、KPIの設計を一緒に整えます。
出典確認:2026年11月8日。個人情報の取扱いに関する個別の判断は、個人情報保護委員会の資料や弁護士等の専門家へご確認ください。管理表、点検表、データ区分の例示、架空例はCareerSync編集部の設計例であり、法令上の様式や特定企業の実績ではありません。
この記事はCareerSyncの支援方針・実務上の考え方を整理したものです。個別の顧客事例や成果の報告ではありません。
