管理職育成・メンタルヘルス

部下の「いつもと違う」に気づいたときの管理職の初動|ラインケアの声かけ・記録・専門家への接続表

部下の様子が「いつもと違う」と感じたとき、管理職の役割は病気かどうかを判断することではなく、仕事上の事実に気づき、話を聴き、産業医や相談窓口などの専門家へつなぎ、必要な業務の調整を行うことです。

そのために、気づいた事実の記録、最初の声かけ、専門家への接続、業務調整、プライバシーの扱いを事前に決めておきます。本記事の成果物は「気づきの記録表」と「初動の接続表」です。

1.ラインによるケアの役割を確認する

厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」(メンタルヘルス指針)の解説パンフレットは、メンタルヘルスケアを「セルフケア」「ラインによるケア」「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」「事業場外資源によるケア」の4つで整理し、ラインによるケアの内容として職場環境等の把握と改善、労働者からの相談対応を挙げています。管理監督者自身もセルフケアの対象とされています。厚生労働省「労働者の心の健康の保持増進のための指針」解説パンフレット。

同資料は、管理監督者が「いつもと違う」部下に早く気づくことを大切だとし、その背後に病気が隠れている可能性があるものの、病気の判断は管理監督者にはできず、産業医もしくはそれに代わる医師の仕事であると説明しています。管理監督者が部下の話を聴き、産業医へつなぐ、または管理監督者自身が産業医に相談する仕組みを事業場に作っておくことが望まれるとしています。出典:同上。

2.「いつもと違う」を仕事上の事実で記録する

同資料は、「いつもと違う」様子の例として、遅刻・早退・欠勤の増加、無断欠勤、残業・休日出勤の不釣合いな増加、仕事の能率の低下、報告や相談・職場での会話の減少(あるいはその逆)、ミスや事故が目立つことなどを挙げています。出典:厚生労働省。

気づきの記録表

日付/観察した事実(例:週に2回の遅刻、定例報告の未提出)/普段との違い/業務への影響/本人とのやり取りの有無/相談した相手(人事・産業医・保健スタッフ)/次に確認する日。病名の推測、性格の評価、私生活の詮索は書かない。

記録は本人を評価するためではなく、専門家へ相談するときに事実を正確に伝えるためのものです。閲覧できる人を限定し、人事評価の資料と分けて保管します。

3.最初の声かけで聴くこと、言わないこと

場面聴くこと・伝えること避けること
声をかける「最近、報告が遅れていることが続いているので気になった」と事実を伝える「やる気がないのでは」と評価から入る
話を聴く業務量、困っていること、手伝えること病気や診断名を尋ねる、私生活を詮索する
つなぐ相談窓口や産業医面談などの選択肢を伝える受診を命令口調で迫る、本人の同意なく周囲に話す
締める次に話す日と、当面の業務の調整を決めるその場で処遇や評価の話をする

面談の記録と次の行動の決め方は1on1の行動シートも参考になります。

4.初動の接続表を事前に作る

初動の接続表

社内の相談窓口(連絡先・受付時間)/産業医・保健スタッフへの相談方法(管理職からの相談も含む)/社外の相談先(事業場外資源)/緊急時(本人の安全が心配な場合)の連絡先と判断者/人事への報告範囲(本人同意の取り方)/業務調整の権限(担当替え、締切変更、残業の制限)/記録の保管場所と閲覧者。

産業医がいない事業場もあるため、自社で実際に使える相談先を具体的に書いておきます。長時間労働が背景にある場合は、残業上限の点検表で業務量を確認します。

5.架空例:報告の遅れとミスが続く部下への初動

以下は顧客実績ではない架空例です。

日管理職の行動(架空)
1日目週次報告が3週続けて遅れ、入力ミスが増えたことを記録表に書く
2日目1対1で事実を伝え、業務量と困っていることを聴く。相談窓口と産業医面談の案内を渡す
同日本人の同意を得て、締切を1週間延ばし、新規の担当を当面割り当てないことを決める
1週間後再度話す。本人が産業医面談を希望したため、人事経由で日程を調整

6.研究から言えること、言えないこと

Gayedら(2018)は、管理職を対象とした職場のメンタルヘルス研修に関する10件の対照試験をメタ分析し、研修が管理職のメンタルヘルスに関する知識、偏見の少ない態度、不調を抱える部下を支援する行動(自己報告)を改善したことを報告しています。一方、部下の心理的症状への効果は、評価した研究が少なく有意な統合効果は認められず、結論は予備的とされています。原著論文(Occupational and Environmental Medicine)/PubMedの書誌・抄録。

この結果は、管理職研修で部下の不調が減ることを示すものではありません。本記事では、管理職が知識と対応の手順を持つことの意義と、効果の限界の両方を示す研究として参照しています。記録表・接続表はCareerSync編集部の設計例です。

よくある質問

本人が「大丈夫です」と言った場合はどうしますか?

無理に聞き出さず、気になった事実と相談先を伝えたうえで、次に話す日を決めます。管理職自身が産業医や人事に相談することもできます。

チームのメンバーに事情を説明すべきですか?

本人の同意なく健康に関する情報を共有しません。業務の調整は、必要な範囲で担当や締切の変更として伝えます。

まず、自社の相談窓口と産業医・保健スタッフへの相談方法を一枚にまとめ、管理職全員に配ってください。評価制度・マネジメント支援では、管理職の面談運用、業務調整の権限、研修を一緒に設計します。

出典確認:2026年11月7日。本記事は医学的な判断を示すものではありません。健康に関する判断は産業医・医師等の専門家にご相談ください。本人の安全が心配な場合は、ためらわず社内外の緊急の相談先へ連絡してください。記録表、接続表、架空例はCareerSync編集部の設計例であり、公的な様式や特定企業の実績ではありません。

この記事はCareerSyncの支援方針・実務上の考え方を整理したものです。個別の顧客事例や成果の報告ではありません。

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