採用戦略・人員計画

採用稟議書の作り方|採用・配置・外注を比較する意思決定シート

採用稟議書は、欠員や現場要望を伝える書類ではなく、採用・社内配置・業務変更・外注を同じ条件で比較し、経営が人員投資を判断できる形にします。

必要な仕事、期限、採用しない場合の影響、代替案、総費用、受入体制、再判断条件を一枚にまとめます。本記事の成果物は、採用判断シートと承認後の前提管理表です。

人数ではなく「埋めるべき仕事」から始める

「退職者の補充を一名」「売上拡大のため営業を二名」と書くだけでは、採用以外の案と比較できません。最初に、誰のどの仕事が、いつまでに、どの水準までできる必要があるかを書きます。前任者の職位をそのまま再現せず、停止・簡素化できる仕事、既存メンバーへ移せる仕事、社外へ任せられる仕事を分けます。

CIPDのWorkforce planning資料は、人員計画を組織の目標と結び付け、現在と将来の人材・スキルの差を確認し、採用だけでなく育成や配置を含む行動へつなぐ考え方を説明しています。本記事では、その考え方を一件の採用承認へ落とし込みます。

採用前に四つの案を比較する

案確認すること見落としやすい負担
採用必要時期までに要件を満たす人を採用・育成できるか採用活動、受入、教育、立ち上がり期間
社内配置任せる人と、元の仕事を誰が担うか異動先・異動元の引継ぎ、本人の準備
業務変更停止、簡素化、自動化、権限変更で仕事を減らせるか変更設計、例外対応、現場への説明
外注・専門家成果物と判断責任を切り分けられるか委託管理、情報共有、契約終了後の継続

複数案の組み合わせも候補です。どの案でも「今の担当者が頑張る」を無償の代替案にせず、追加負荷と期限を記録します。

採用判断シートの9項目

項目記入する内容
決めたいことどの役割を、いつ、どの雇用・契約形態で確保するか
事業上の理由顧客、売上、品質、納期、継続業務の何に影響するか
必要な仕事主な成果物、判断範囲、関係者、対象外
必要時期仕事が始まる日と、採用・引継ぎ・習熟に使える期間
代替案配置、業務変更、外注、延期の成立条件
総費用報酬だけでなく採用、受入、教育、設備、管理の費用
受入体制上司、教育担当、権限、最初の成果物、確認頻度
未実施の影響採用しない・遅れる場合に変える計画と許容期限
判断と再確認承認者、費用上限、前提が変わったときの再稟議条件

架空例:顧客対応リーダーを一名確保する

以下は顧客実績ではない架空例です。問い合わせの回答判断が担当者ごとに分かれ、商品担当への確認が滞っている会社を想定します。金額や期間は置かず、判断の構造だけを示します。

欄記入例
必要な仕事回答基準を更新し、例外案件を判断し、再発要因を商品担当へ返す
採用案リーダーを採用。選考と業務習得期間が必要
配置案既存SVを配置。現在担う品質管理の移管先が必要
外注案一次受付は委託可能だが、回答基準と例外判断は社内に残す
推奨案当面は一次受付の外注と社内配置を組み合わせ、採用要件を検証する
再判断条件配置元の業務が移管できない、または開始日に間に合わない場合

この例の結論が他社にも適切とは限りません。各案で「誰が何を担うか」と、決定を変える条件を同じ紙面で比較することが重要です。

承認会議で確認する順番

  1. 必要な仕事と事業期限を確認する。
  2. 採用しない場合に変える事業計画を確認する。
  3. 採用・配置・業務変更・外注の成立条件を比較する。
  4. 費用だけでなく、受入と管理の工数を確認する。
  5. 推奨案、決定者、開始日、費用上限を決める。
  6. 前提を見直す日と、中止・変更条件を決める。

前提が不足している場合は、却下で終わらせず、誰が何を確認すれば再判断できるかを残します。

承認後に前提を管理する

  • 募集開始日、採用期限、入社可能時期を区別する。
  • 採用要件を変更した場合、必要な仕事との整合を確認する。
  • 候補者が集まらないとき、予算だけでなく役割・働き方・選考期間を見直す。
  • 入社が遅れる場合の配置・外注案へ切り替える日を決める。
  • 入社後は、人数ではなく最初の成果物と支援状況を確認する。

よくある質問

採用費はいくらまで書けばよいですか?

固定の割合ではなく、求人・紹介・選考・設備・受入・教育など、自社が意思決定に含める費目を定義します。未確定なら幅と上限、確定日を記載します。

欠員補充でも代替案は必要ですか?

必要です。前任者の仕事をそのまま残す前に、今後も必要な仕事、止める仕事、移す仕事を確認します。緊急補充では、暫定承認と事後の業務見直しを分けても構いません。

採用する役割の定義は採用要件シート、月別費用の比較は人件費シミュレーションも参照してください。

参考資料:CIPD:Workforce planning(2026年10月3日確認)。判断シートと架空例はCareerSync編集部による設計例です。

この記事はCareerSyncの支援方針・実務上の考え方を整理したものです。個別の顧客事例や成果の報告ではありません。

PUT IT INTO PRACTICE

人員・人件費計画を、
自社の運用に。

売上・利益計画と部門の業務量をもとに、月次の人員・人件費・採用計画を設計します。採用時期や昇給の条件を変えたときの影響を見える化し、必要な投資を判断できる状態にします。

このテーマの全体像を確認する

人員計画と人件費計画を、業務量・必要時期・予算からつなぐ実務ガイド。課題別の読む順序、進め方、最初に準備する資料をまとめました。

人員計画・人件費計画の立て方|課題別に読む実務ガイド →

次の実務ノートも、仕事の判断材料に

新着記事のRSSをお使いのRSSリーダーに登録すると、人員計画・採用・組織づくりの記事をまとめて確認できます。

自社で試すときに迷った点や、次に取り上げてほしいテーマは、お問い合わせフォームへ記事のURLとともにお寄せください。候補者や従業員の個人情報、社外秘の資料を送る必要はありません。

次に決めるべきことを、
一緒に整理しませんか。

初回相談は無料。課題がまとまっていなくても、ご相談いただけます。

経営・人事の課題を相談する